バンドマンに村を燃やされている。

日常の潤いに少しでも乾きを!

2021年6月20日。

 

作り話をしましょう。どこまでが作った話かわかりづらくなってしまうので目安として、話の終わりには「おしまい」という言葉をつけます。それより前は全部作り話だと思ってくださいね。

 

 

私、4月に目の手術をしたんです。斜視っていう病気で、右目と左目が違う方向を向いてしまって、ものがひどくずれて、ダブって見えたりする病気です。人の目は両目で見ることでものを立体的に感じるんですけど、私は片目同士の映像しか映せなかったので立体視の機能は完全になくなってたんです。そのせいで色々見間違えることも多くなってしまいました。

 

話は少しずれますが、シャンプーしてる時後ろに気配を感じることがありますよね。私にもありました。それはドライヤーをしている時なんですけど、決まって夜中の2時過ぎに"ソレ"を感じるんです。


鏡を見てドライヤーをしていると、視界の左端に、黒いもやのようなものがちらつくんです。それが厄介なことに、ピントを合わせるためにそちらに目をやろうとするとまた逃げるように左にずれていく。私は夜中に風呂に入ることが多かったのでそんなやりとりが何日が続いたころ、気がつきました。

 

"ソレ"は視界にうつってるんじゃなくて、目の中にいるんです。だから追っても追いつかない。

 

正直別の意味で恐怖しました。手術を目前に控えていて、また別の病気にかかっていることが発覚したら延期になってしまいますから。私は次の手術前診察で医師にそのことを話しました。いつもより入念に検査と診察をしてもらいましたが、目には何も異常がありませんでした。


異常がないなら別にいいやという気持ちで手術当日を迎え、日帰り手術なのでその日は母とビジネスホテルに泊まりました。

 

眼球に溶ける糸を使用した手術なので術後1週間は刺さるような痛みを感じることがあると説明を受けていました。たしかに目を閉じると数秒でチクリとした痛みが走り、夜はなかなか寝つけませんでした。特に左目の痛みが辛く、朝日が登る頃痛み止めが効いてやっと眠りにつくことができました。

 

眠りが浅かったのでしょうか。夢を見ました。どこかのビル街になぜか私しかいません。自分でもああこれは夢だと思いました。夢ならなにしても現実に影響ないだろうとそのまま歩きました。夢って実際のものと違ったとしてもなんとなくそれを受け入れてますよね。たしかにその時もビル街にはありえないような波打つ道や大きなトンネルを潜ったりしました。

 

どこまで歩くんだろうなあと思った時、左端に見覚えのある"ソレ"が現れました。夢にまで現れるのかと驚きながら思わずそちらに顔を向けると今まで視界の端に居続けた"ソレ"が全く逃げず、しっかりとこの目で捉えることができたのです。一体どんな姿だったのか、今となってはよく思い出せません。ただそのあと砂嵐のように目の前が揺れたと思ったら両肩を誰かにポンと叩かれ、「間に合ってよかったね」という声がしたのは覚えています。声の主は女性とも男性とも捉えられる不思議な音をしていました。

 

左目の鋭い痛みとともに目が覚めました。痛み止めが切れたのでしょう。チェックアウトの時間ギリギリだったのでそのあとは母と急いで支度をして家に帰りました。2ヶ月以上過ぎましたが、目は順調に回復して立体視機能も取り戻せました。術後"ソレ"に一度も会っていません。

 

本当に斜視による異常だったのか。もし少しでも遅れていたら間に合わなかったのでしょうか。だとしたらなにに間に合わなかったのか、それは分かりませんが今健康に過ごせて良かったなぁと思っています。

 

という作り話でした。おしまい。

 

 

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ところで私が冒頭でお話したことは覚えていますか?

 


『作り話をしましょう。どこまでが作った話かわかりづらくなってしまうので目安として、話の終わりには「おしまい」という言葉をつけます。それより前は全部作り話だと思ってくださいね。』

 

 

そして私は、どんなふうに話を終えましたっけ。